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設計士インタビュー
風の丘樹木葬墓地を設計された関野らんさんの講演会を行った際のインタビューをまとめました。
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風の丘樹木葬墓地への想い

■大学院時代に内藤廣教授から受けた影響と、お墓への新たな視点
私は兵庫県出身で、東京にあるプロテスタントの中学高校に通い、毎日全学年が集まる礼拝の時間がある学校生活でした。礼拝は講堂の中で近くに他の生徒がいる中で、自分の内面と向き合っている状態が不思議な感じで、自分と向き合うことと、たくさんの人と空間を共有することが共存する貴重な時間でした。それが今の設計に対する考え方に繋がっている気がします。
その後、東京大学の大学院に進学し、建築家の内藤廣教授の下で建築を学びました。建築家は人の賑わう場所や活気のある場所に注目しがちですが、お墓という人にとってある意味一番大事なことをもっと考えるべきだという教授の考えに影響されてお墓に関する研究を始めました。
■「風の丘樹木葬墓地」設計までの歩み
墓地の設計に関わったきっかけは、NPO法人エンディングセンター代表で社会学者の井上治代さんが都内で樹木葬墓地の企画を検討されている際に、空間の設計を私が所属していた研究室に頼まれたことです。その時は、自分が眠るならどんなお墓が良いだろうということを一番に考えて設計しました。その後、大学院を修了してからも樹木葬墓地の設計をいくつか行いお墓に特化した設計士として知られるようになる中で慈眼寺のご住職と知り合い、風の丘を設計するに至りました。その頃には最初の墓地を設計してから十年以上経っていて、風の丘はその十年間お墓のことを考えつづけた集大成だと思います。

■コンセプトは「百年以上続く場所」
お墓のコンセプトとしてご住職と最初にお話ししたのが「百年以上続く場所」ということでした。そこで、周囲の地形と馴染ませることを重視して古墳のようなずっと変わらずここにあるもの、あたかも最初からあったかのような場所になることを目指しました。風の丘樹木葬墓地は高尾山から連なる多摩丘陵の一部にあります。ここは宅地造成で山が切り開かれた場所ですが、多摩丘陵の流れに合わせて少し膨らんだ形にして、周りの地形とつながるようにしました。
ここに初めて来た時、風が吹いていてとても気持ちの良い場所だと感じました。ご住職も奥様も開放感があるこの場所を気に入られていたので、それを崩してはいけないと思いました。
■「死」から「生」へ──設計を通じてたどり着いたお墓の新しい視点
風の丘を作る中で、設計する際の考え方に変化がありました。以前は自分がどんなお墓に入りたいかを考えて作っていましたが、それは毎回遺書を書いているようで辛くもありました。ですが、ここで百年以上続く場所を作るというコンセプトでお墓をつくることになり、本当にお墓とは「死」だけを考える場所なのか、と考えるようになりました。学生時代にお墓は人の生き様を表すものだという研究をしていたにもかかわらず、実際に設計する際は亡くなった後のことばかり注視していたと気付き、お墓は「人の生きること」を体現する場所なのではないかと考えるようになりました。私は設計をする際に「個別性・連続性・全体性」という言葉をキーワードにしています。人は個々のかけがえのない存在であると同時に、社会のいろいろな人との繋がりの中で生きています。また時間的に見ても、自分という存在は先祖から受け継がれた命でさらに次の世代に繋がっていきます。自分という個別の存在と、それが連続して繋がって作られる全体としての社会や長い歴史「個別性・連続性・全体性」すべてを感じられる空間が、お墓としてふさわしい場所だと思います。

■水の流れや風景の変化が語る、いのちの象徴
風の丘樹木葬墓地は、一人で来ても、もの思いに耽れるような場所であってほしいと思っています。ぼーっとしているといつの間にか時間が過ぎていたと感じていただけるように、風景の変化を楽しめるよう水面の波紋をつくる装置を入れたり、石に凸凹をつけたりすることで水の流れを一定にしないように工夫しました。この水の流れが人のいのちを表しているような感じがするとよく言っていただけますが、人生と同じように捉えていただけることをありがたいと思います。
残された人がここに来た時に明るく過ごしている様子を見ながら、亡くなった人が心地よく眠っていただけていることを祈っています。中に眠る人には、埋葬場所だけに閉じ込められて眠るのではなく、風に乗って、土に広がって、魂は自由にここからどこへでも広がって過ごしていただきたいという気持ちで作りました。
また、この場所をいろんな人と共有しているという感覚になってほしいという願いもあります。芝生に区画の線が見えないことで、一人一人が埋葬場所だけでなく、広いエリアを共有しているという感覚になっていただきたいです。普通のお墓は一区画だけが自分の場所という感覚ですが、風の丘樹木葬墓地は全体が自分の場所、全体が我が家と感じて居心地よく眠っていただけると嬉しいです。
■未来に残るお墓を願って
今この社会で風の丘樹木葬墓地を作ったということは歴史の一部ですが、百年後、千年後も遺跡のように残ってくれたらと思っています。血の繋がりがなくても、百年後に来た人が、ここに眠っている人がいるということを感じていただけるような、歴史が積み重なって時間が経つほど良い場所になっていくことを願っています。